北日本四政経懇話会

北日本政経懇話会7月特別例会

「清少納言と紫式部の時代」

【日時】令和6年7月5日(金)正午
【会場】ANAクラウンプラザホテル富山
【講師】酒井順子氏(エッセイスト)
【演題】「清少納言と紫式部の時代」

北日本政経懇話会の7月特別例会が5日、富山市のANAクラウンプラザホテル富山であり、エッセイストの酒井順子氏が「清少納言と紫式部の時代」と題して講演した。平安時代の女性作家について、当時の暮らしぶりや権力関係などを解説。「制約が多かった生活の中、心の中にたまった感情を文章で自由に表現できたことが、彼女たちの幸福につながっていたのではないか」と語った。


◆文章に感情のせ幸せに

 高校時代にエッセーを書き始めた。30歳ぐらいの時、自身が随筆を書く仕事をしているにもかかわらず「枕草子」を原文で読んだことがないのはいかがなものかと思い、辞書を引きながら少しずつ読み進めた。
 すると、国語の教科書に載っている章段以外にも共感できる部分が多く、千年前の人間が今のわれわれにも通じる感情を持っていたことに衝撃を受けた。科学技術が発展しても、嫉妬や憎しみといった人々の感情の根本は変わらないものだと気付かされた。
 放送中のNHK大河ドラマ「光る君へ」で描かれているのは、藤原道長たちが生きた平安中期。戦国時代などと比べて、現存している資料が少ないこともあり、ドラマには脚本家の空想が大いに含まれている。
 例えば紫式部は「紫式部日記」で清少納言への嫌みをつづっており、両者は「光る君へ」で描かれるように仲が良かったわけではなかったようだ。またドラマでは「まひろ」こと紫式部が自由に出歩いたり友人と会ったりしているが、当時の女房たちは家族以外の男性に顔を見せるのはご法度で、気軽に外に出るのもままならなかったとされる。
 当時は位の高い男性に見初められる、いわゆる玉のこしに乗った女性を「幸(さいわ)い人(びと)」と呼んでいた。これは「ハッピー」より「ラッキー」に近い幸せだが、清少納言や紫式部は社会と接し、自身の感情を文章にのせて自由に表現することで「ハッピー」に近い幸せを感じていたのだろう。
 彼女たちの文学には、今の私たちにも役立つヒントが詰まっている。ぜひ読んでみてほしい。


◆交代会員6人紹介

 講演に先立ち、交代会員として6人が紹介された。
▽交代会員=常盤典靖(秋吉商事代表)長谷川健司(共同通信社富山支局長)室尚志(北日本新聞社常務)中嶋徹(日本生命保険富山支社長)東山章(東山設備代表)中村毅(北日本新聞サービスセンター常務)


◆次回は大竹氏(経済学者)

 9月例会は同月18日に富山市のANAクラウンプラザホテル富山であり、経済学者の大竹文雄氏が講演する。問い合わせは北日本新聞社事業局、電話076(445)3369。

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