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北日本政経懇話会6月例会

「習近平中国をどのように理解すべきか ~今後の中国との付き合い方~」

【日時】令和6年6月13日(水)正午
【会場】オークスカナルパークホテル富山
【講師】垂 秀夫 氏(立命館大学教授、前駐中国大使)
【演題】「習近平中国をどのように理解すべきか ~今後の中国との付き合い方~」
北日本政経懇話会は13日、富山市のオークスカナルパークホテル富山で6月例会を開き、前駐中国大使の垂秀夫立命館大教授が「習近平中国をどのように理解すべきか~今後の中国との付き合い方」~と題して講演した。「中国は豊かさを求めることから、国家を強くすることへ主眼が変わっている」と指摘し、「視座を高くして変化を捉えることが重要だ」と語った。


◇視座高く変化捉えて

 中国はすごい勢いで変わった。そして今も変わっている。中国を巡っては権力闘争論や「改革派と保守派」のような二元論で語られることが多いが、もっと社会科学的な視点が大事だ。
 中国は選挙がないからこそ、中国共産党が広大な土地と十数億の人民をなぜ統治するのか、その問いに常に答え続ける必要がある。毛沢東亡き後、最高実力者だった鄧小平が出した答えは「経済成長によって豊かにする」ということだった。一方、習近平は「中国を強くする」ことを掲げた。
 江沢民や胡錦濤の時代になり、経済成長率を維持できなくなった。数百億元規模の腐敗汚職が横行し、2005年にはデモや暴動が1日当たりで数百件起きた。胡錦濤は08年の講話で「中国共産党の地位は永遠でも不変でもない」と危機意識をあらわにした。
 習近平も強い危機感を持ち、特に国防、食糧、生態環境、エネルギー、経済産業の安全の五つを重点項目に掲げている。工場を移転させるなどして、10年かけて生態環境を大幅に改善した。
 政治体制も変わった。中国の根幹は「集団指導体制」だったが、習近平は自身の名前で多くの通達を出すことで「一人支配体制」を築いた。神格化につながり、忖度(そんたく)や事なかれ主義が横行するようになった。
 外交はどうか。かつては経済成長のために安定した国際環境が必要だったが、今は強い中国の実現のために強く出る「戦狼外交」のスタイル。米国とは闘争と安定を繰り返す状態だ。
 日本はもはや重視されない「見ない国」になっている。3月の全国人民代表大会で王毅外交部長が行った記者会見では、日本に関する質問が一つも取り上げられなかった。長く中国に関わってきたが、こんなことは初めてでショックだった。日本は今、中国とのチャンネルを持っていない。本当にこれでいいのだろうかと疑問に思っている。


 7月特別例会は同月5日に富山市のANAクラウンプラザホテル富山であり、エッセイストの酒井順子氏が「清少納言と紫式部の時代」と題して講演する。問い合わせは北日本新聞社事業局、電話076(445)3369。

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