北日本四政経懇話会

北日本政経懇話会 5月例会

「地球温暖化と脱炭素のファクトフルネス」

【日時】令和6年5月8日(水)正午
【会場】ホテルグランテラス富山
【講師】キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 杉山大志 氏
【演題】「地球温暖化と脱炭素のファクトフルネス」
北日本政経懇話会の5月例会が8日、富山市のホテルグランテラス富山であり、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏が「地球温暖化と脱炭素のファクトフルネス」と題して講演した。国内外の観測データを示しながら「二酸化炭素(CO2)の増加、気温上昇は確認できるが、自然災害の激甚化は起きていない」と指摘。温暖化の悪影響が誇張されているとし「安全保障と経済を重視したエネルギー政策が必要になる」と述べた。


◇経済重視のエネルギー政策を

 きちんと事実を押さえる「ファクトフルネス」を大事にしている。観測データを共有しながら進めたい。大気中のCO2濃度は江戸時代末期に比べると1.5倍になり、気温は100年で0.7度上昇した。
 気候変動対策の理由に災害の頻発化や激甚化が挙げられるが、それを示すものはない。台風の発生数は毎年20~25で変わらず、風速33m以上の「強い」以上の台風も横ばいだ。近年、年降水量は増えているが、1950年代も多く現在と変わらない。短期のデータを切り取ると事実を見誤る。
 脱炭素でどれだけ気温が下がるのか。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の資料に基づくと1兆トン削減で0.5度。日本政府の掲げる2050年の脱炭素に当てはめると、150億トン削減で0.007度の効果しかない。
 政府は「エネルギー基本計画」を3年に一度改定している。間もなく始まる第7次の策定に向け、私を含む有志が「エネルギードミナンス」を提言した。豊富、安価、安定なエネルギーを供給し、優勢(ドミナンス)を築く概念だ。
 現在のCO2削減の主因は経済活動量の低下つまり産業空洞化だ。計画で示すべき数値目標は他にある。例えば電気料金を東日本大震災前の水準に戻す。原子力の活用が不可欠で、長期的に50
%まで高めることが目標だ。原子力は発電量当たりの死亡率が最も低い電源で、再稼働や運転期間延長によって生産コストも圧倒的に安価に抑えられる。
 国際情勢は不穏で、新しい冷戦が起きつつある。温暖化は問題でなくなるだろう。米大統領選でトランプ氏が当選すればパリ協定の空文化は避けられない。エネルギー備蓄、インフラ防衛を強化する必要がある。日米でエネルギードミナンスを確立し、途上国を巻き込むことでパリ協定より有効なCO2削減にもなる。


 6月例会は同月13日に富山市のオークスカナルパークホテル富山であり、前駐中国大使の垂秀夫立命館大教授が「『習近平中国』をどのように理解すべきか~今後の中国との付き合い方」と題して講演する。問い合わせは北日本新聞社事業局、電話076-445-3369。

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