にいかわ政経懇話会5月例会
「脱・奪い合いの経営『誰もが経営の現場」をもつことの意味」
【日時】令和6年5月28日(火)正午~
【会場】ホテルグランミラージュ
【講師】岩尾俊兵氏(慶応義塾大学商学部准教授)
【演題】「脱・奪い合いの経営『誰もが経営の現場」をもつことの意味」
にいかわ政経懇話会は28日、魚津市のホテルグランミラージュで5月例会を開き、慶応大商学部准教授の岩尾俊兵氏がと題して講演した。豊かさの実現には「『失われた30年』でこびり付いた価値有限思考からの脱却が求められる」と訴えた。
◇「価値は無限」発想転換を
経営学は、放っておくと「○○を得るためには何をしてもいい」という考え方に陥ってしまう。カントの「実践理性論」「道徳形而上学」から考える経営概念は、他者と自分を同時に幸せにするという「価値創造」の究極の目的に向かって、実現を妨げる対立を解消して豊かな共同体をつくり上げることだ。この概念をみんなが信じれば、みんなハッピーになれる。
経営層の孤立、従業員の困窮、凶悪犯罪の増加、企業不正といった現代の「訳の分からない苦しさ」は、全て対立が形を変えたものだ。対立するのは価値が有限だと考えるからだ。価値が有限なら他者から奪う以外に豊かになる道はない。価値は無限につくれるという発想の転換こそが「訳の分からない苦しさ」の真の解決策になる。
経営には「価値有限」と「価値無限」の二つのパラダイムがある。前者は経営者、従業員、株主、顧客、政府が有限の価値を奪い合う敵同士なのに対し、後者では無限の価値を創造する仲間になる。
かつて、日本企業の強みの本質は価値創造の発想を世の中に広げ、みんなで豊かになることを目指す「価値創造の民主化」にあった。しかし、1971年のニクソン・ショックと、円高へと流れを変えた85年のプラザ合意によって円が投資対象となり、日本は人が集まって価値を創造し、豊かになるという経営を捨てた。
今の世の中は「カネの論理」で金融資本主義的な有限価値の奪い合いだ。資本主義の論理を学べたという良い面はあるが、「価値有限」から「価値無限」への発想の転換が必要。一方で「ヒトの論理」である一種の共産主義の考え方が広がっているが、有形の生産手段の共有にこだわっていては、資本家と労働者はずっと対立することになる。
価値無限のパラダイムなら分断と対立は起きない。経営知識という資本は無限に増殖可能であり、AIの時代において全ての人が人生の経営者だという感覚が必要になる。
(交代会員を紹介/)
講演に先立ち、交代会員として吉澤正樹日本カーバイド工業執行役員魚津・早月工場長が紹介された。
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