北日本四政経懇話会

にいかわ政経懇話会6月例会

ロシア・ウクライナ戦争と日本の安全保障

【日時】令和7年6月26日(木)正午~
【会場】ホテルグランミラージュ
【講師】小泉悠(東京大学先端科学技術研究センター 准教授)
【演題】ロシア・ウクライナ戦争と日本の安全保障
にいかわ政経懇話会は26日、黒部市のホテルアクア黒部で6月例会を開き、東京大先端科学技術研究センター准教授の小泉悠氏が「ロシア・ウクライナ戦争と日本の安全保障」と題して講演した。戦争はまだ終わらないと指摘し「欧州や日本を巡る状況は悪化していくだろう。将来的に事態が悪くなればなるほど、そこから目を離してはいけない」と語った。
 国連人権高等弁務官事務所の調べでは、ウクライナの民間人犠牲者は3年間で少なくとも1万2300人で、子どもは650人とされる。現在は国土の5分の1が占拠されているが、恐らく取り返せないだろう。
 「ウクライナが抵抗するから民間人が死に続ける」といった議論がある。だが、占領地域では占領当局に否定的な人がどんどん捕まり、拷問を受け、殺されている。性的暴行を含めた住民への虐待が行われ、子どもが大量に連れ去られた。国際法で禁止されている占領地域での徴兵制も敷いている。白旗を上げれば平和になるわけではない。
 プーチン大統領の本心をうかがわせる点が二つある。一つは地政学の話で、ウクライナは西側の軍事拠点になってしまうというもの。もう一つが条約上は独立を認めながらも、条件を破れば、独立が取り消されるようなことを言っている。他国の機嫌を損ねると取り消されるような独立を主権と呼べるだろうか。
 一方、ロシア側の戦死者は英BBC放送などの追跡調査からの推測で16万~21万人。戦場で勝ってはいるが、あまりに犠牲が多い。軍事の論理で停戦できないのなら、政治の論理になる。米国がイニシアチブを発揮できるかが大きい。
 トランプ大統領は選挙中に戦争を終わらせると言っていたが、ふたを開けると、早期停戦とは事実上のウクライナの降伏だった。占領地を渡せば、プーチン大統領が満足すると信じていたような節がある。大国がウクライナの首根っこを押さえれば、簡単に言うことを聞くと。これが根本的な間違いだと思う。
 日本はどうか。やみくもに軍拡すれば良いと思わないが、米国がアジアから引いてしまう危機感が共有されているのかは疑問だ。軍が引くときはあっという間だ。我々はどうすべきか。こういう方向で行くと国民が腹をくくらなければ、ふわふわした外交政策や安全保障政策になってしまう。

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