北日本四政経懇話会

北日本政経懇話会9月例会

「ビジネスに活かす行動経済学」

【日時】令和6年9月18日(水)正午
【会場】ANAクラウンプラザホテル富山
【講師】大竹文雄氏(大阪大感染症総合教育研究拠点特任教授)
【演題】「ビジネスに活かす行動経済学」
 北日本政経懇話会の9月例会が19 日、富山市のANAクラウンプラザホテル富山であり、大阪大感染症総合教育研究拠点の大竹文雄特任教授が「ビジネスに活かす行動経済学」と題して講演した。人間は心理特性から合理的な判断ができず、現状維持に流れやすいと指摘。「特性を理解して情報の提示や選択肢の設定を工夫することで望ましい意思決定ができる」とし、自発的な行動変容を促す手法「ナッジ(肘でつつく)」を紹介した。

 人間には「現状維持バイアス」がある。変化を損失と捉えやすく、合理的に考えると変化が望ましい場合でも避けることがある。ベストセラーになった「ヤバい経済学」の著者であるシカゴ大学のスティーヴン・レヴィット教授は運営するサイトに悩み相談コーナーを設け、相談者がコイントス占いに基づいて現状維持か変化を決めるという実験をした。追跡調査すると、コイントスに従って変化を選んだ人の方が現状維持を選んだ人よりも幸福度が高かった。迷ったら変化を選ぶべきという分析結果だ。

 アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)も意思決定に影響する。米国オーケストラの演奏家の採用試験に関する研究が有名だ。現在の女性比率は35%以上だが、かつては5%だった。研究では性別も含め誰か分からない採用試験の導入による影響を明らかにした。実力が比較的容易に判断できる職種であっても性別が分かると男性を採用する比率が高かったのだ。

 本人や社会にとって望ましい行動を促す手法を「ナッジ」と呼ぶ。同じデータでも基準を変えることで利得、損失どちらも強調できる。心理特性を理解し、どちらを強調すべきかよく考える必要がある。

 代表的なナッジには、意思明示がない場合に選択されたとみなされる内容「デフォルト(初期設定)」の変更、先延ばしを防ぐために将来の行動に制約をかける「コミットメント」などがある。「多くの人ができている。自分もやらなくては」と思わせる社会規範の活用も有効だ。


◆新入・交代会員紹介

講演に先立ち、新入会員1人、交代会員6人が紹介された。
 ▽新入会員=川田文人(個人)▽交代会員=森川忍(ANAクラウンプラザホテル富山総支配人)佐々木弘(中部観光社長)高田健(阪神容器社長)浦田智章(しまだ・シオンホール花みずき代表取締役)石原利信(西日本旅客鉄道執行役員金沢支社長)川本元裕(北陸機材社長)


◆次回は増田明美氏

 10月例会は同月16日にオークスカナルパークホテル富山であり、大阪芸術大教授の増田明美氏が「スポーツの力と地域社会」と題して講演する。問い合わせは北日本新聞社事業局、電話076(445)3369。

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