北日本四政経懇話会

にいかわ政経懇話会10月例会

地鉄の一部廃線案で揺らぐ鉄道王国・富山~観光立県に再建不可欠

【日時】令和7年10月23日(木)正午
【会場】ホテルグランミラージュ
【講師】大塚圭一郎氏(共同通信社経済部次長・「鉄旅オブザイヤー」審査員) 
【演題】地鉄の一部廃線案で揺らぐ鉄道王国・富山~観光立県に再建不可欠
 にいかわ政経懇話会は23日、魚津市のホテルグランミラージュで10月例会を開き、共同通信社経済部次長で「鉄旅オブザイヤー」審査員の大塚圭一郎氏が「地鉄の一部廃線案で揺らぐ鉄道王国・富山」と題して講演した。「富山地方鉄道の業績不振はローカル鉄道の構造的な問題を内包している」と指摘した上で「行政は、沿線地域の経済発展のためにも支援を前向きに検討すべきだ」と訴えた。
 地鉄の鉄道線・軌道線(路面電車)の営業距離は108・4キロで、福岡県の大手私鉄の西日本鉄道(106・1キロ)を上回る。前身の富山電気鉄道創業者の故佐伯宗義氏が「一県一市街化構想」を掲げ「山奥に住んでいても教育・文化・就労の自由が保障されるべきだ」という高い理念を描いたことが、充実した路線網構築の背景にある。
 だが、県の発展に寄与した一県一市街化構想の理想と、人口減少社会による経営圧迫の現実との間でギャップが生じている。設備投資も後手に回って経営は悪化。地鉄は支援が得られなければ、2026年11月末で本線滑川―宇奈月温泉間と立山線岩峅寺―立山間の2線区を廃線にする方針を沿線自治体に伝えた。
 私は交渉期限の年末を控え、26年度は補助金を上積みして廃止を回避し、本線滑川―新魚津以外の赤字3線区は「みなし上下分離」方式に移行すると想定している。全線存続が理想だが、滑川-新魚津間は併走する「あいの風とやま鉄道」が複線で、所要時間が短いアドバンテージがあるため一本化するのではないか。
 新魚津―宇奈月温泉間は観光の新たな起爆剤「黒部宇奈月キャニオンルート」に不可欠だ。「みなし上下分離」移行の公算が大きいが、JR西日本と旧国鉄が特急列車などを宇奈月温泉まで乗り入れていたことがあり、私の案はあい鉄への移管。富山からの所要時間は1時間ほどに短縮でき、競争力は増す。
 地鉄が追い込まれたのは、普段使いが少なくなってしまったことが一因だ。沿線住民が積極的に利用し、自治体も補助金を出し、カネも口も出す「マイレール意識」を徹底してほしい。地鉄再建は鉄道王国・富山を再構築する重要な一歩になる。

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